川田 祐子 展
ー 空は知っている ー

これまでの自己の内側へと重層性、深さを突き詰めて行く制作から、
今はより軽やかさ、純粋さ、自由へと向かっています。
このような変化は、制作への情熱が高まり、時が止まった瞬間、
何気なく仰ぐ空が、私にそっとささやいてくれることなのです。

2015年1月10日(土) − 2月1日(日)

12:30〜19:00(土曜、日曜〜18:00) 月曜休廊


最新作の空のシリーズは、全て日常生活の中で出会ったありきたりな空模様ではあるものの、とりわけ雲をその瞬間のリアルな雲として描きながら、それを単なる即物的な雲ではなく、雲それ自体に作家が世界を見つめる視点を投射させる鏡、あるいは見る人の自然に対する思いを投射させる鏡でもあります。

「 山は動く 」 2014 hatching / acrylic gouache on canvas 113 × 162 cm ¥1,200,000 -

この作品も日常に出会った金色の雲が題材です。
描いている内に、作品の中から濃紺の山が見えたり、雲に隠れたりを続け、その間に御嶽山の噴火や、大きな地震が起きました。
自分なりにその時に実感した、「山は不動だ、などと決して一口には言えない。
山も生きて動いている」という気持ちを率直に込めた作品です。
山に登れば、もっと細やかな気持ちを描く山の作品になるのかもしれません。
しかしこの作品では、画面に山を描かずに山を見てもらう、という内容にしました。
「山はどこにあるんですか?」と聞く人も出てくるかもしませんが、山はいつでも「雲隠れ」するものであり、山は着実にゆっくりと動いていることを私たちは地震から学んでいます。
また「山」とは、ある意味自分の限界の壁や、人生の険しさのシンボルでもあります。
誰でもその人がその人なりの山へと、敢えて踏み込んでいるのだと最近感じるようになって来ました。
その勇気と力を象徴する作品とする予定です。

「 それぞれを超えて 」 2014 hatching / acrylic gouache on canvas 72.7 × 72.7 cm ¥360,000 - SOLD OUT

絵画には、さまざまな可能性があるはずです。
現代社会の価値観は多様化されて、アートの世界もその多様な価値観に可能性が広がりながらも、大量の情報の渦に巻き込まれて、アート難民となるような人々も多く存在することは確かなことです。
そうしたさまざまな価値観を持つ人々に向けて、アートあるいはアーティストはある意味重い重責と試練とに耐え抜く力が必要です。
そうした眼で空を見上げた時に、ある時そこに羊雲が浮かんでいました。
「それぞれを超えて」という作品は、それぞれの価値観を持つ群衆が、それでもひとつの大きな塊として、例えば大衆として存在する様を羊雲にオーバーラップして見て感じてもらう作品です。

「 無方の空 」 2014 hatching / acrylic gouache on canvas 162 × 194 cm ¥2,000,000 -

空への人間の視点は、これまで大地が下にあり、天空が上となることが常識となっておりますが、発表する「無方の空」は、天と地が左右になるように描きました。
しかしそのような無方向性の画面から、雲の形に私たちが奇怪なさまざまな存在の気配を掻き立てる力があることをおしえてくれます。
それは雲をクールにリアルに描こうとすればする程、見る人の心の中にある不安や深刻さを紡いで現われ出て来るからなのかもしれません。

「 無時の泉 」 2014 hatching / acrylic gouache on canvas 91 × 72.7 cm ¥400,000 -

想えば、私たちは誰でも幼い頃に、この曖昧模糊とした雲を空想の遊び場として見ていた時期あったのです。
そういう意味で、雲は想像を掻き立てる源泉とも言えます。
「無時の泉」という作品は、西洋絵画がしばしば取り上げる「泉」というテーマ(アングルやデュシャンなど)へのオマージュとして制作しました。
私にとっての泉とは、見る人自身の空想力が「永遠の泉」であり、時を止めて空想するその瞬間こそが永遠であり、
雲を人間の視点としての天地を左右にすることで、雲という概念が取り払われて雲が持っているアフォーダンスの力だけが残り、見る人によって様々な形が飛び出す作品になるよう仕立てています。

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